美術×建築 まちあるきワークショップ2020
丸の内のマップをつくる
歴史の残し方
丸の内に残された古い建物の高さは概ね共通しており、これはかつての100尺制限(1933年美観地区指定)によるものである。
その後一律の高さ制限が撤廃されたことによって、高層化が進んだが、それと同時に歴史的建造物の保存も行われてきた。
歴史的建物が保存されている面は大通り側に多い。このことは、丸の内の開発を進めてきた人々の伝統的な景観要素を保全しようとしてきた意識を反映していると考えられる。

(解説)
1.はじめに
1-1.テーマについて
1914年、1964年、2014年の変化を区画ごとに比較し、丸の内の建物の変遷について考察した。古地図を用いて、変化している箇所・変化していない箇所を判別し、変化していない=歴史的建造物が残っている箇所に焦点を当てた。
1-2.主な歴史的建造物
①明治生命館
②三菱一号館
③三菱UFJ信託銀行ビル
④KITTE
2.①明治生命館
2-1.建設年
1934年に完成。2001年に改修工事。
2-2.歴史・機能
1928年(昭和3年) 当時の三菱第二号館に隣接して新社屋を建設することが決まる。
1934年(昭和9年) 竣工。太平洋戦争後はGHQに接収され、アメリカ極東空軍司令部として使用。
1956年(昭和31年) アメリカ軍から返還。
1997年(平成9年) 昭和の建造物として時初めて重要文化財の指定を受ける。
2001年(平成13年) 改修工事*が行われた。
* 隣接して新しい30階建ての明治安田生命ビルを建設し、古い建物とともに一体的に利用することで、
全面保存が実現した。 現在も明治安田生命保険の本社屋として利用されている。
3.②三菱一号館
3-1.建設年
オリジナルは1894年に完成。現在の復元版は2009年に完成。
3-2.歴史・機能
1894年(明治27年) 銀行・郵便局・商社が入居していた。
1968年(昭和43年) 老朽化のため三菱地所により解体。
2009年(平成21年) 同社により美術館として復元。
4.③三菱UFJ信託銀行ビル
4-1.建設年
2003年2月。地上30階地下4階の建物で、低層部は日本工業倶楽部会館である。
4-2.歴史・機能
大正9年、日本工業倶楽部会館として建設された。当時は財界の記念碑的な存在で、国賓を迎えることを考慮して入り口にはドリック・オーダーが配され、正面階段も広く設計された。第二次世界大戦後は、復興発展の礎としての役割を担い、経団連や、日経連、経済同友会も事務局を置いていた。現在は財界人の交流の場としての役割を担っており、新たに付加された高層部は、三菱UFJ信託銀行本店ビルとなっている。
5.④KITTE
5-1.建設年
2012年7月。商業施設「KITTE」としてオープンしたのは2013年3月。低層部は1931年に建設された旧東京中央郵便局舎の一部を保存・再生したものである。
5-2.歴史・機能
1917年 初代局舎が完成するが1922年に焼失した。
1931年 旧東京中央郵便局舎が完成された。当時は、機能、デザイン、構造ともに世界最高水準の
近代的なビルで、日本国内に存在する全郵便局の中枢として機能した。
現在 郵政民営化によってその機能が拡張されている。JPタワーが2012年に施工され商業施設「KITTE」や、
ミュージアムなどを備えた複合施設になった。「KITTE」の外観は旧局舎を再現したもので、タイルや窓を
復元しており、内部の柱などもそのまま残されている。
6.なぜこのような建物が多く残っているのか
丸の内は1933年に「美観地区」に指定され、景観保護のため建物の高さに100尺(約 31m)の制限があったが、1963年建築基準法に容積地区制が導入されたことで、絶対高さ制限が撤廃され、高層ビルが立ち並ぶようになった。元の建造物を保存したうえで高層棟を付加する開発手法をとったケースが多く、多くの歴史的な建物が残されている。
7.考察
歴史的建造物が保存されている面は、大通り側に多い。これらの場所は、丸の内を開発しようとした人々が意識的に残した部分であり、伝統的な部分を残しておくという開発者の意識が反映されているのではないかと考えられる。
8.まとめ
・残された建物の高さは概ね共通しており、これには、1933年の100尺制限が関係している。この制限が撤廃されたことによって、建物は高くなったが、同時に歴史的建造物の保存も行われていることがわかる。
・これらの建物の中でも、古い建物が表面に出ている場所は、広幅員道路や皇居に面している。
・それらは、丸の内を開発した人たちが、丸の内の「表の面」として捉えていた場所だと考えられる。
【参考ウェブサイト】
・https://kenchiku-pers.com/photo/mitsubishi-ufj-trust-and-banking-corporation.html
・http://www.kogyoclub.or.jp/building.htm
・http://www.otemachi-marunouchi-yurakucho.jp/wp/wp-content/uploads/2015/03/vol033.pdf
・https://office.mec.co.jp/area/history.html
【参考文献】
・井口悦男(2010)『東京今昔歩く地図帖』学研ビジュアル新書
・岡本哲志(2009)『「丸の内」の歴史』ランダムハウス講談社
・鹿島茂(2017)『東京時間旅行』作品社
【執筆者】
1.石黒翔也(創造理工学部4年)
2.塚元春香 (文化構想学部3年)
3.守屋未紅(文化構想学部3年)
4.富士原睦唯(文化構想学部3年)
5.神希海(文化構想学部4年)
6.ナムユンジ(文化構想学部4年)